
損害保険料控除から地震保険料控除へ
家計を守る上で大切な保険ですが、その保険料は時として大きな負担となることがあります。かつては、『損害保険料控除』という制度があり、この負担を軽くする助けとなっていました。この控除は、火災保険や自動車保険など、様々な損害保険の保険料を支払った場合、その金額に応じて所得税や住民税が軽減されるというものでした。
例えば、自動車を所有し、運転中に事故を起こして多額の修理費用が発生した場合を想像してみてください。このような事態に備えるために自動車保険に加入しますが、保険料の支払いは家計にとって無視できない出費です。損害保険料控除は、こうした保険料の負担を軽減することで、人々が安心して必要な保険に加入できるよう支援する役割を担っていました。また、火災保険料も控除対象でした。火災は、家財を失うだけでなく、住む場所さえも失ってしまう可能性のある大きな災害です。火災保険への加入を促進することで、災害後の生活再建を支援する狙いもあったと考えられます。
しかし、平成十九年に所得税、そして翌平成二十年には住民税において、この損害保険料控除は廃止されることとなりました。控除の対象となる保険の種類が幅広く、多くの人が利用できたため、国の財政を圧迫する一因となっていたことが背景にあります。歳出を抑え、財政の健全化を図るためには、見直しが必要だったと言えるでしょう。
とはいえ、すべての損害保険料控除がなくなったわけではありません。地震保険料控除は現在も継続されています。地震はいつどこで起こるか予測が難しく、甚大な被害をもたらす可能性があります。地震保険への加入を促すことで、地震災害への備えを強化し、被害軽減を図ることが目的です。損害保険料控除は、時代の変化とともにその姿を変え、地震災害への備えという重要な役割を担い続けているのです。