会計

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税金

減価償却:価値の減少を理解する

建物や機械、車両など、会社が仕事で使うものの中には、長い間使えるものがたくさんあります。これらを固定資産と言いますが、これらの固定資産は、使っているうちにだんだん古くなって価値が下がっていきます。例えば、真新しいトラックを購入したとします。購入当初はピカピカで最新の機能を備えています。しかし、毎日荷物を運んで何年も使い続けると、当然ながら傷やへこみができ、エンジンも劣化していきます。数年後には修理が必要になるかもしれませんし、新しい、より燃費の良いトラックも登場するでしょう。このように、固定資産は時間と共に劣化したり陳腐化したりして、その価値が徐々に減少していくのです。 この価値の減少分を、会計上きちんと処理する手続きが減価償却です。もし、トラックの購入費用を一度に全て経費として計上してしまうと、購入した年に大きな損失が出て、その後の年の利益が実際よりも高く見えてしまいます。これは、会社の本当の経営状態を把握する上で適切ではありません。そこで、減価償却を行い、トラックの価値の減少分を、そのトラックが使えるであろう期間(耐用年数)にわたって少しずつ経費として計上していくのです。 例えば、1000万円で購入したトラックの耐用年数が10年だとすると、1年あたり100万円ずつ経費として計上します。こうすることで、トラックを使ったことによるコストを、その使用期間全体に公平に配分できるようになり、会社の業績をより正確に反映した決算書を作成できます。また、減価償却によって計上された費用は、税金の計算上も経費として認められるため、節税効果も期待できます。このように、減価償却は会社の経営状態を正しく把握し、健全な経営を続ける上で非常に重要な役割を果たしているのです。
その他

経常利益:会社の本当の収益力を見る

経常利益とは、会社が普段の事業活動によってどれだけの儲けを生み出しているかを示す大切な数値です。会社の主な事業で得た利益だけでなく、事業とは直接関係のない活動で得た利益や費用も含めて計算されます。そのため、会社の総合的な収益力を測る指標として用いられます。 まず、会社の主な事業活動で得られる利益を営業利益といいます。これは、製品の販売やサービスの提供といった本業による儲けを表します。次に、営業外利益と営業外費用を考慮します。営業外利益とは、本業以外の活動で得られた利益のことです。例えば、保有している株式の配当金や、土地や建物を売却して得た利益などが挙げられます。一方で、営業外費用とは、本業以外の活動で発生した費用のことです。例えば、借入金の利息の支払いなどがこれにあたります。 経常利益は、営業利益に営業外利益を足し込み、そこから営業外費用を差し引くことで算出されます。このように、本業以外の利益と費用も含めることで、会社の全体的な収益力をより正確に把握することができます。高い経常利益は、会社が安定した収益基盤を持っていることを示唆し、将来の成長への期待を高めます。逆に、低い経常利益、あるいは経常損失は、会社の収益構造に問題がある可能性を示し、経営改善の必要性を示唆します。 経常利益は、投資家が企業の業績を評価する際に非常に重要な指標となります。投資家は、経常利益の推移を見ることで、企業の収益力の変化や安定性を判断し、投資の意思決定に役立てます。また、銀行などの金融機関も、企業への融資を検討する際に経常利益を重要な判断材料とします。安定した経常利益は、企業の返済能力の高さを示すからです。このように、経常利益は、企業の経営状態を評価する上で欠かせない指標であり、様々な場面で活用されています。
その他

契約者配当準備金繰入額とは?

保険会社は、将来の保険金や給付金の支払いに備えて、集めた保険料の一部を責任準備金として積み立てておく必要があります。この責任準備金は、将来の支払いを確実に行うための重要な役割を担っており、いわば契約者との約束を守るための大切な資金です。様々な種類の責任準備金がありますが、その中の一つに契約者配当準備金があります。 契約者配当準備金は、読んで字の如く、契約者配当の支払いに備えて積み立てられます。契約者配当とは、保険会社の剰余金の中から、保険契約者に還元されるお金のことです。分かりやすく言うと、会社の業績が良かった場合に、その利益の一部を契約者に分配する仕組みです。この配当金は、加入している保険の種類や契約期間、そして会社の業績によって金額が変動します。必ずしも毎年支払われるとは限らず、保険会社の経営状況に応じて、配当を行うかどうかが決定されます。 もし配当を行うと決定された場合、積み立てられていた契約者配当準備金から支払いが行われます。つまり、契約者配当準備金は、将来の契約者への還元を確実にするための安全装置と言えるでしょう。保険会社は、経営の安定性を保ちつつ、契約者への利益還元も実現するために、この準備金を適切に管理する必要があります。安定した経営があってこそ、契約者への還元も可能となるため、契約者配当準備金は、保険会社と契約者の良好な関係を維持するための重要な役割を果たしていると言えるでしょう。また、この準備金の存在は、契約者にとって安心感を与えると共に、保険会社に対する信頼感にも繋がる重要な要素と言えるでしょう。
その他

退職給付会計:企業の将来負担を理解する

退職給付会計とは、従業員が定年退職などによって会社を辞めた後に支払う退職金や年金といった退職給付にまつわるお金の計算や処理のことです。会社は、将来従業員に退職給付を支払う約束をしているため、その支払いに備えて、前もってお金を積み立てておく必要があります。この積み立ては、会社の財産を減らす費用として、そして将来の支払い義務として記録されます。この費用と負債を適切に記録するのが退職給付会計です。 この会計処理は、会社の健全な経営状態を示すためにとても大切です。会社の状態を正しく理解するために、お金を貸している人や会社に出資している人など、会社に関わる人たちに正しい情報を伝える必要があるからです。特に、あらかじめ退職金の額が決まっている確定給付型という制度を導入している会社は、法律で退職給付会計に基づいた処理をすることが義務付けられています。確定給付型では、将来支払う退職金の額があらかじめ決まっているので、会社は将来かかる費用を予測して、きちんと会計処理をしなければなりません。 退職給付会計では、将来の退職者数や平均寿命、金利の変動予測など、様々な要素を考慮した複雑な計算が必要になります。例えば、平均寿命が延びれば、それだけ退職後に年金を支払う期間が長くなるため、会社はより多くのお金を準備しておく必要があります。また、金利の変動も、積み立てたお金の運用益に影響を与えるため、将来支払う金額に大きく関わってきます。このように、退職給付会計は将来の不確実な事柄を予測するため、専門的な知識を持った担当者による慎重な分析と計算が必要不可欠です。そのため、多くの会社では専門の担当者を配置したり、外部の専門家に依頼したりしています。
手続き

既経過保険料とは?分かりやすく解説

保険に加入すると、毎月または毎年保険料を支払います。これは、将来起こるかもしれない病気やけが、事故などに備えるためのお金です。いわば、将来の万一への共同準備に参加しているようなものです。 皆様から集められた保険料は、大きく分けて三つの用途に使われます。一つ目は、実際に事故や病気などが発生した際に保険金をお支払いするための費用です。これは「支払備金」と呼ばれ、いわば、皆様の保険金請求に備えるためのプールのようなものです。二つ目は、保険会社を運営するための費用、つまり事業費です。たとえば、社員の人件費や事務処理の費用、保険を販売するための費用などです。三つ目は、将来の支払いに備えて積み立てておく「責任準備金」です。これは、将来の保険金支払いに備えるための準備金であり、加入者の将来の保障を確実にするためのものです。 さて、今回ご紹介する「既経過保険料」とは、契約開始日から現在までの間に、すでに支払われた保険料のことを指します。たとえば、年間契約の保険に加入し、すでに半年が経過したとしましょう。この場合、年間保険料のうち半年分の保険料が既経過保険料となります。この既経過保険料は、すでに支払備金や事業費、責任準備金などに充てられています。 既経過保険料を理解することは、保険料がどのように使われているかを理解する上で重要です。また、中途解約などを行う際に、払い戻される金額などに影響を与える場合もあります。保険を正しく理解し、活用するためにも、既経過保険料についてしっかりと理解しておきましょう。
その他

エンベディッド・バリュー:保険会社の真価

保険会社の実力を測る物差しの一つに、エンベディッド・バリュー(略してEV)というものがあります。これは、会社が今現在持っている財産の価値を測るだけでなく、将来の契約から生まれる利益についても、今時点での価値に置き換えて評価するものです。つまり、今ある財産だけでなく、将来どれだけの利益を生み出す力を持っているのかも含めて、会社の価値を総合的に判断するための指標なのです。 例え話で考えてみましょう。同じ規模の畑を持つ二人の農家がいるとします。一人は土壌改良や新しい農法の研究に熱心に取り組んでおり、将来大きな収穫を見込めます。もう一人は現状維持に満足し、将来の収穫増は見込めません。どちらも今の畑の広さは同じでも、将来得られる利益は大きく違ってきます。EVはこのような違いを明らかにするのに役立ちます。 EVは、保険会社が現在保有している契約、つまり保険加入者との約束から、将来どれだけの利益が生まれるかを予測し、その価値を計算します。例えば、毎月保険料を支払うタイプの生命保険であれば、将来にわたって保険料収入が見込めます。また、保険金や給付金の支払いが発生する可能性や、事業運営にかかる費用なども考えなければいけません。これらの要素を全て考慮し、将来の収益を現在時点の価値に換算することで、より正確な会社の価値を算出します。 このように、EVは現在時点での財産価値だけでなく、将来にわたる収益力も評価するため、より多角的で長期的な視点から保険会社の価値を測ることが可能になります。同じように見える財産規模の会社でも、将来の利益を生み出す力が大きく異なる場合があり、EVを用いることでその違いを浮き彫りにし、より的確に会社の実力を評価できるのです。