
遺贈による財産承継:基礎知識
遺贈とは、遺言書によって自分の財産を無償で特定の人や団体に譲ることです。この財産には、現金や預貯金だけでなく、土地や建物、株券、美術品など、あらゆるものが含まれます。遺贈は、亡くなった後に自分の財産を誰にどのように渡すかを決める方法の一つで、相続とは異なるものです。
相続は、民法で定められた親族(法定相続人)が自動的に財産を引き継ぐ制度です。配偶者は常に相続人となり、子どもがいれば子どもも相続人となります。子どもがいなければ、親、兄弟姉妹が相続人となります。
一方、遺贈は遺言を作成することで、法定相続人以外の人や団体にも財産を譲ることができます。長年お世話になった友人や知人、あるいは、特定の社会活動を行っている団体などに、感謝の気持ちを表すために財産の一部を贈りたい場合、遺贈という方法が有効です。また、法定相続人がいない場合でも、遺贈によって自分の財産の行き先を指定できます。
遺贈には、特定の財産を特定の人に譲る「特定遺贈」と、財産全体に対する割合を指定して譲る「包括遺贈」の二種類があります。例えば、「自宅をAさんに譲る」というのが特定遺贈、「財産の3割をB団体に譲る」というのが包括遺贈です。
遺贈を受ける人や団体は「受遺者」と呼ばれます。受遺者は、遺贈を受けるかどうかを自由に選択できます。遺贈を受ける場合は「相続の開始があったことを知ってから3か月以内」に、家庭裁判所に対して遺贈の承認または放棄の手続きをしなければなりません。
遺贈は、自分の意志で財産の行き先を自由に決められるため、感謝の気持ちを示したり、社会貢献を実現したりするための有効な手段となります。