
エンベディッド・バリュー:保険会社の真価
保険会社の実力を測る物差しの一つに、エンベディッド・バリュー(略してEV)というものがあります。これは、会社が今現在持っている財産の価値を測るだけでなく、将来の契約から生まれる利益についても、今時点での価値に置き換えて評価するものです。つまり、今ある財産だけでなく、将来どれだけの利益を生み出す力を持っているのかも含めて、会社の価値を総合的に判断するための指標なのです。
例え話で考えてみましょう。同じ規模の畑を持つ二人の農家がいるとします。一人は土壌改良や新しい農法の研究に熱心に取り組んでおり、将来大きな収穫を見込めます。もう一人は現状維持に満足し、将来の収穫増は見込めません。どちらも今の畑の広さは同じでも、将来得られる利益は大きく違ってきます。EVはこのような違いを明らかにするのに役立ちます。
EVは、保険会社が現在保有している契約、つまり保険加入者との約束から、将来どれだけの利益が生まれるかを予測し、その価値を計算します。例えば、毎月保険料を支払うタイプの生命保険であれば、将来にわたって保険料収入が見込めます。また、保険金や給付金の支払いが発生する可能性や、事業運営にかかる費用なども考えなければいけません。これらの要素を全て考慮し、将来の収益を現在時点の価値に換算することで、より正確な会社の価値を算出します。
このように、EVは現在時点での財産価値だけでなく、将来にわたる収益力も評価するため、より多角的で長期的な視点から保険会社の価値を測ることが可能になります。同じように見える財産規模の会社でも、将来の利益を生み出す力が大きく異なる場合があり、EVを用いることでその違いを浮き彫りにし、より的確に会社の実力を評価できるのです。