
モラルリスクと生命保険
モラルリスクとは、人が保険に加入したことで、普段よりも危険な行動をとってしまう、あるいは保険金や給付金を得るために不正を働いてしまうといった倫理的に問題のある行動をとる危険性のことです。これは、経済的な損失を被る可能性が低くなることで、注意深さが欠けてしまう心理的な変化が原因の一つと言えるでしょう。
例えば、生命保険に加入した場合を考えてみましょう。生命保険は、病気や怪我、死亡といった不慮の出来事に対して経済的な保障を提供する制度です。しかし、この制度を逆手に取る人がいるのも事実です。高額な保険金を受け取る目的で、故意に事故を起こしたり、健康状態を偽って保険に加入するといった行為はモラルリスクの典型的な例です。また、入院給付金を受け取るために、必要のない入院をしたり、治療を長引かせたりするケースも考えられます。このような行為は、保険会社にとって大きな損失となるだけでなく、他の契約者の保険料負担を増やす原因にもなりかねません。
モラルリスクは、保険制度全体の健全な運営を阻害する深刻な問題です。そのため、保険会社は様々な対策を講じています。例えば、保険金の支払い審査を厳格に行うことや、不正の疑いがある場合には調査を行うことなどが挙げられます。また、契約者に対しては、保険の正しい理解を促すための啓発活動なども行われています。私たちもモラルリスクの問題をしっかりと認識し、保険制度を正しく利用していくことが大切です。一人ひとりの倫理観が、保険制度の持続可能性を守る上で重要な役割を担っていると言えるでしょう。