
遺産分割:円満な相続のために
人が亡くなると、その方が残した家や土地、預貯金、株などの財産は、法的な手続きを経て相続人に承継されます。この承継される財産の全体を遺産といい、この遺産を誰がどれくらい受け継ぐのかを決める手続きが遺産分割です。
遺産分割は、故人の遺言があれば、その内容を尊重して行います。遺言がない場合は、民法で定められた法定相続分に従って、相続人全員の話し合いで決定します。遺産分割の話し合いは、相続開始を知ったときから3年以内に行うのが一般的です。話し合いは、相続人全員が納得するまで続けられますが、意見がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停でも解決しない場合は、審判手続きに移行し、最終的には家庭裁判所が決定を下します。
遺産分割では、故人の意思を尊重すること、相続人全員が納得できる形にすることが大切です。遺産分割がうまくいかないと、相続人間で争いが生じ、長引く争いに発展する可能性があります。例えば、特定の相続人が他の相続人を無視して遺産を勝手に処分したり、一部の相続人に有利な分割方法を押し付けたりすると、大きなトラブルになりかねません。また、遺産に不動産が含まれる場合、評価額の算定や分割方法が複雑になることもあります。さらに、相続税の申告期限は相続開始から10か月以内と定められており、遺産分割が遅れると申告期限に間に合わなくなる可能性もあります。
円満な遺産分割を進めるためには、相続人同士で十分に話し合い、お互いの立場や考えを理解することが重要です。必要に応じて、弁護士や税理士などの専門家に相談し、法的アドバイスや遺産分割案の作成支援を受けることも有効です。専門家は、中立的な立場で相続人の相談に乗り、紛争を未然に防ぎ、円満な解決へと導いてくれます。遺産分割は、人生における大きな出来事であり、相続人にとって精神的な負担も大きいものです。専門家のサポートを受けながら、冷静に手続きを進めることが重要です。