
大数の法則と保険
大数の法則とは、同じ状況で何度も同じことを繰り返すと、その結果の平均が本来あるべき姿に近づくという統計の大切な考え方です。
たとえば、コインを投げると表と裏が出る見込みはそれぞれ半分です。しかし、実際にコインを数回投げただけでは、必ずしも表と裏が同じ回数ずつ出るとは限りません。10回投げたら表が7回、裏が3回のように偏ることもあります。これは試行回数が少ないため、偶然の要素が大きく影響しているからです。
ところが、投げる回数を100回、1000回と増やすとどうでしょうか。表と裏が出る回数の割合はそれぞれ半分に近づいていきます。試行回数を増やすほど、偶然による偏りが薄まり、結果の平均が本来あるべき姿、つまり表と裏が半々という理論上の値に近づくのです。これが大数の法則です。
この法則は、一見予測できない偶然の出来事でも、たくさん観察することで隠れた法則性を見つけることができると教えてくれます。保険の世界を考えてみましょう。いつ、誰が、どんな事故にあうかは予測できません。しかし、たくさんの人のデータを集めれば、一年間にどれくらいの人が事故にあうか、その割合はどのくらいかをある程度正確に知ることができます。保険会社はこの法則に基づいて、保険料や保障内容を決めているのです。
つまり、大数の法則は、不確かな出来事でも、大量にデータを集めることで、より確かな予測を立てることを可能にする、統計学の基礎となる重要な考え方なのです。