
仮処分と損害賠償の仮払い
交通事故は、思いもよらない瞬間に私たちの生活を一変させる恐ろしい出来事です。身体への傷はもちろんのこと、心の傷、そして生活の支えとなるお金の面での負担など、様々な苦しみをもたらします。これらの損害に対して、事故を起こした加害者に対し、損害を償ってもらうための請求を行うことができます。これを損害賠償請求といいます。損害賠償請求によって、被った損害を金銭で償ってもらうことで、生活の立て直しを図ることができます。しかし、損害賠償の金額が決まるまでには、多くの場合、長い時間がかかります。特に、事故の後遺症が残ってしまうような大きな事故の場合、治療の経過を見ながら損害の程度を判断する必要があり、最終的な賠償額が確定するまでには数か月から数年かかることも珍しくありません。
事故直後から、治療費や日々の生活費の支払いが滞ってしまうと、被害者の生活はすぐに苦しくなってしまいます。十分な収入がなく、貯蓄も少ない場合、治療を受けることさえ難しくなるかもしれません。そこで、損害賠償請求とは別に、加害者に対して一時的に金銭を支払ってもらうための手続きを行うことができます。これを仮処分といいます。仮処分は、裁判所に申し立てを行い、認められると、正式な損害賠償の判決が出る前に、加害者から一時的に金銭を受け取ることができます。この金銭を仮払金といいます。仮払金を受け取ることで、治療費や生活費の支払いを続けることができ、生活の不安を少しでも和らげることができます。仮処分は、被害者の生活を守るための重要な制度です。交通事故に遭ってしまった場合、まずは専門家、例えば弁護士などに相談し、適切な手続きを進めることが大切です。専門家は、被害者の状況に合わせて、損害賠償請求や仮処分の申し立てなど、必要な手続きをサポートしてくれます。一人で悩まず、専門家の力を借りることで、一日も早く平穏な生活を取り戻せるよう努めましょう。