
特別支給の老齢厚生年金とは
昭和六十年の年金制度の大改革は、社会の高齢化という大きなうねりの中で行われました。人々の寿命が延び、高齢化社会が目前に迫る中で、それまで通りの年金制度では将来にわたって年金を支え続けることが難しくなると考えられたのです。そこで、厚生年金の支給開始年齢を六十歳から六十五歳に段階的に引き上げるという大きな改革が行われました。
しかし、支給開始年齢を一度に六十五歳に引き上げてしまうと、六十歳から六十五歳までの間、収入がなくなってしまう人が多く出てしまいます。これは人々の生活に大きな影響を与え、社会の混乱を招く可能性がありました。そこで、この改革による影響を和らげるために、経過措置として設けられたのが「特別支給の老齢厚生年金」です。これは、六十五歳までの支給開始年齢の引き上げによる空白期間に、年金を受け取ることができるようにした制度です。
この特別支給には、いくつかの種類があります。例えば、特定の時期に厚生年金に加入していた期間の長さや、生年月日などに応じて、六十歳から六十五歳までの間に年金を受け取ることができる場合があります。これにより、支給開始年齢の引き上げによる収入の減少を補い、人々の生活の安定を図ることが目指されました。
特別支給の老齢厚生年金は、年金制度の大改革に伴う混乱を避けるための重要な安全網としての役割を果たしました。高齢化社会への移行という大きな社会変化の中で、人々の生活を守り、社会の安定を維持するために、この制度は重要な役割を担ったと言えるでしょう。