
保険代位:あなたの権利と保険会社の役割
保険代位とは、損害保険において、保険会社が被保険者に保険金を支払った後に、被保険者が本来持っていた加害者に対する損害賠償請求権が、保険会社に移転する制度のことです。これは、法律(保険法第672条)で定められており、「保険者代位」とも呼ばれます。
具体例を挙げましょう。あなたが自動車事故の被害者になり、相手方に修理費用10万円を請求する権利があるとします。この時、あなたの加入している自動車保険から10万円が支払われたとします。すると、その後、相手方に対して10万円を請求する権利は、あなたから保険会社に移ります。つまり、保険会社があなたに代わって、相手方に修理費用10万円を請求することになります。
では、なぜこのような制度があるのでしょうか。それは、保険金と損害賠償金を両方受け取ることで、被保険者が不当に利益を得てしまうことを防ぐためです。保険は、事故などで受けた損害を元に戻すためのもの、つまり損害を填補するためのものであって、事故によって利益を得るためのものではありません。この考え方は、「保険によって利得すべからず」という原則で表され、保険制度における非常に重要な考え方です。もし、保険金と損害賠償金の両方を受け取ることができてしまったら、わざと事故を起こして利益を得ようとする人が出てきてしまうかもしれません。保険代位は、このような不正を防ぎ、保険制度の健全な運営を支える重要な仕組みなのです。
また、保険代位には、保険料の負担を公平にするという役割もあります。保険会社が加害者から損害賠償金を取り戻すことで、保険金の支払いに充てるお金を確保することができます。これにより、全ての保険加入者の保険料負担を軽くすることにつながるのです。